過去参加者インタビュー記事

サイエンスキャッスル研究費
アサヒ飲料賞2022を経て
加速し続ける落花生研究

2022年のアサヒ飲料賞に採択された、渋谷教育学園幕張高等学校の藤木陽世さん。
アサヒ飲料賞を終了してから2年、さらに研究を進めてきた藤木さんと
当時の研究アドバイザー酒井さんとともに振り返ります。

※「カルピス」はアサヒ飲料株式会社の登録商標です。

プロフィール

  • 藤木 陽世 さん(渋谷教育学園幕張高等学校)
  • 酒井 美由季 さん(アサヒ飲料株式会社 技術研究所)

サイエンスキャッスル研究費アサヒ飲料賞2022採択。当時は「落花生の発酵とからの再利用方法について」というテーマで研究。

1. 研究の第一歩:アサヒ飲料賞への応募

そもそも「アサヒ飲料賞」に応募しようと思ったきっかけは何だったんですか?

藤木さん:部活の友達と「自分たちでテーマを作成して研究をしよう」という話になったのですが、当時、部活に研究を進めている先輩がいなくて、何から始めればいいか全く分からない状態でした。色々調べていくうちに研究助成金のプログラムがあることを知り、「アサヒ飲料賞に応募するのをきっかけに、研究プランを立ててみよう」と決めたのが始まりです。採択された時は「えっ、本当に?」と驚きました(笑)。

酒井さん:中学3年生の時ですよね。初めて自分でテーマを立てて、それで採択されたのは本当にすごいことだと思います。実際の申請書はすごく綺麗にまとまっていて、審査会の時もしっかり受け答えされていたので、もっと前から研究をされていたのかと思っていました。

2. 「推進力」となった定期的なメンタリング

初めての研究を進める中で、困っていたことは解消されましたか?

藤木さん:はい。定期的なメンタリングがあったことで、「いつまでに何をやるのか」「最低限どこまで進めればよいのか」といった目標を具体的に整理できました。初めての研究で手探りだった中でも、締め切りから逆算してやるべきことを考えられるようになり、それが研究を前に進める大きな推進力になったと思います。

酒井さん:私はアドバイザーを務めるのが初めてで、そして世代の離れた学生さんの伴走ということで、最初は手探りでした。サイエンスキャッスルに応募してくる皆さんは、やる気はあるけれど手段がまだ不明瞭なことが多い。正解が分からない中で、「今これを言うのがアドバイスとして適切なのか」と悩むこともありましたが、みなさんと一緒に考え、試行錯誤する中で、私自身も伴走方法そのものに正解はなく、自らより良い方法を模索することが重要なのだと非常に勉強になりました。

3. 試行錯誤の夏:落花生の「薄皮」との出会い

研究を進める中で、一番大変だったステップはどこでしたか?

藤木さん:最初の計画を立てるところです。5人のチームだったので、夏休みにワイワイ実験したりデータをまとめたりするのは苦ではなかったのですが、「まだ実験が始まっていない中で、成果発表会という締め切りに向けて、どう研究を収束させるか」という計画作りには苦労しました。

酒井さん:5人で何度も自問自答しながら進めていましたよね。面談の直前までチームで会議をして、私との面談に臨み、終わったらまた会議……という熱量でした。

藤木さん:実は、最初の計画では「発酵」関連をメインに書いていたんです。でも、落花生を部位ごとにメンバーで手分けして研究していく中で、申請書の内容からそれた実験となり・・・最終的には研究自体が「炭」や「薄皮」の話にシフトしていきました。

藤木さんが薄皮に着目したのはなんでですか?

藤木さん:チームの中で、殻で紙を作りたい人や、実で納豆を作りたい人が分かれていく中、誰もやりたがらなかったのが「薄皮」でした(笑)。最初は薄皮でお茶を作ってみたのですが、私以外の全員が「まずい!」と言って。私は美味しいと思ったので、「みんなに美味しいと言わせたい」という意地で研究を続けました。半年間で自作した落花生茶に含まれるポリフェノール量を測定し、しっかりとポリフェノールが存在することを証明しました。

学校の顧問の先生には「データが間違っているんじゃないか」と何度も懐疑的な目を向けられました(笑)。それが悔しくて、「絶対に証明してやる」と、アサヒ飲料賞が終了したあとも、粘り強く2年ほど個人で研究を続けました。

4. 専門的な探究:渋みの謎を解き明かす

その後、研究はどのように発展していったのでしょうか。

藤木さん:研究費終了後は、薄皮茶と緑茶を混ぜると渋みが消えることに気づき、その理由を調べました。

通常、渋みはポリフェノール量と相関があるのですが、測定してみると、緑茶と混ぜた時の方が相対的にポリフェノール量が増えていたんです。「量は増えているのに、なぜ渋みが減るのか?」という疑問から、さらに深く分析を進めました。

酒井さん:予想と逆の結果が出た時に、それを「面白い」と捉えて突き詰める探究心は、まさに研究者そのものだと思います。

研究はかなり専門的な分析までされていますよね。

藤木さん:より高度な測定手法を用いて研究を進めるために、「論文を読んだのですが、研究室を使わせてもらえませんか」と論文著者の順天堂大学の教授に直接アポを取りました。運よく受け入れてくださり、2年間研究室をお借りしてデータを取ることができました。先生のご協力からCV法(サイクリックボルタンメトリー)などを使って分析した結果、落花生の薄皮に含まれる「プロシアニジン」というポリフェノールが、緑茶の「カテキン」の抽出を促進している可能性が見えてきたのです。現在は水素結合による重合などが関わっているのではないかという仮説を立て研究を続けています。

酒井さん:その行動力は本当にすごい!自分でルートを切り拓いたのですね。

5. 未来への展望:医学の道へ

これからの進路や目標を教えてください。

藤木さん:医学部への進学を目指しています。元々は臨床医志望でしたが、この2年間の研究を通して「研究の楽しさ」を知りました。将来は大学病院などで、臨床と研究を両立できる医師になりたいです。

最後に、これから研究を始める中高生へメッセージをお願いします。

藤木さん:研究はハードルが高いイメージがあるかもしれませんが、始めてみるとそんなことはなく、楽しいです。ぜひ一歩踏み出して、楽しんでください!

酒井さん:アドバイザーを検討されているアサヒ飲料の社員の方にも、ぜひ挑戦してほしいです。教えるというより、学生さんの新鮮な視点からむしろ学ぶことの方が多く、フラットで刺激的な経験になります。

ありがとうございました。